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2007.02.09

懐中しるこ

明治の文豪、森鴎外の好物の言えば「饅頭茶漬け」である。饅頭を四つに割り、その一つを御飯の上にのせ、煎茶をかけてたべるのだそうだ。旨いのかどうかは判らないし、試してみようとも思わない。
でも、今回はそれを髣髴とさせる食べ物である。

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日本橋文明堂/懐中しるこ
「厳選したもち米のみを使って丁寧に焼き上げた香ばしい皮に、小豆のさらし餡とあられを入れた逸品」だそうな。

懐中しるこというのは、モナカのなかにお汁粉の“要素”が詰め込まれていて、それをお碗に割りいれ、お湯を注ぐとお汁粉になるというもので、江戸時代から伝わる日本伝統のインスタント食品である。
江戸時代とはいえ、そんな持ち歩いてまでもおしるこを食べたいもんなのか?と疑問がわくが、江戸時代の旅といえば何週間か、もしくは何ヶ月にもわたる徒歩である。旅の途中で、必要な時に甘いものを食べて、体力の回復を図るのは重要なことであっただろう。

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さて。

パッケージの裏側には「召し上がり方」が書いてある。要約すると「袋の中で最中皮を割り、お碗に移して熱湯を注ぎ良くかき混ぜろ」とのことだ。

でも、割る前の最中の形を知っておきたかったので、割らずに袋から出してみた。

触ってみると、これが予想以上に硬い。最中といえば大抵は中の餡の水分を吸ってしっとりしているものだが、これはカチンカチン。皮だけが剥がれてくるようなこともない。最中というよりはちょっとしたカプセルだ。懐中で潰れないようにするためだろうか。今の時代、これを懐中に入れて持ち歩く人はいないと思うが・・・。

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割ってみようと、両手に力をいれたら・・・バシャッ! ああやっちゃった・・・
中は、小豆の粉。ココアの粉と砂糖を混ぜたような感じのもの。それが飛び散った。

当然、最中の中には小豆餡のような粘性の高いものが入っていると思ってたので、これは予想外というか、失敗だった。
「袋の中で最中皮を割れ」という説明は、そういうことだったのだ。
「さらし餡」とはこういうものだったのか。

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お湯を注ぐと、みるみるうちにさらし餡が溶けて、しるこ状になっていく。そして最中の皮が餅の代わりになっていく。餅というよりは煎餅汁の煎餅みたいなのだが。

味はもちろんお汁粉の味だが、その甘さは上品な和菓子のようなあっさりしたもの。餅(汁を吸った最中の皮)が、麩みたいになってしまっているので、もっとモチモチした感じになれば良いのだが。無理だろうか。

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懐中しるこ。容器とお湯があれば作れるので、登山で野営するときなどに便利かもしれないな。
そういえば富士山の登山道にある山小屋で、お汁粉が食べられるんだよね。

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